【カンティナ情報】カルテルン-Kaltern

今回は生産者紹介です。南チロルでは13の協同組合(同地域内ワイン生産量の70%)のワイナリーが存在しています。南チロルワインの概要をまとめたものがありますので、そちらもぜひご覧ください。 

➡︎【ワイン概要】南チロルとは

その中でもワイン街道のメインシティー・カルダロ(伊)、カルテルン(独)、カルタン(英)にある協同組合「カンティーナ・カルテルン」です。10年前まではイタリア語表記(カンティナ・カルダロ)とドイツ語表記(ケッレライ・カルテルン)の2種類の名前が存在していました。しかし市場の困惑を避けるために「カルテルン」に統一されました。ですのでイタリアのワイン誌にも「カンティーナ・カルテルン」と表記されています。それではまず生産者概要を覗いてみましょう。


【生産者概要カルダロ(伊)カルテルン(独)Kaltern】  

●所在地:カルダロ  

●住所:Via Cantine 12 I-39052 Caldaro

●URL: https://www.kellereikaltern.com/en

●創業:1900年 

●メンバー:650 農家 

●プレジデント: Cristian Sinn

●エノロゴ: Andrea Moser

●アグロノモ: Hansjörg Palla, Hannes Rohregger

●栽培面積:450ha 

●年会生産本数:約350万本

●栽培形態: 契約畑

●生産ライン:計39種類 

 ■ QUINTESSENZ クインテッセンツライン(5)

PB, SV, Lago di Caldaro Superiore, CS, MG

 ■ SELEZIONE セレツィオーネ(15)

Brut Nature Spumante, PB Viel, PG Soll, Ch Saleit, SV Stern, Kerner Carned, GWT Campaner, SOLOS Bianco Bio, LdC Leuchtenberg, St.Magdalener Gröbner, PN Saltner, Me Ris Lason, Lagrein Lareith, Cab Me Feld, CS Ris Campaner

 ■ Classico クラッシコ(16)

PB, CH, PG, MT, SV, GWT, MG, K WHITE, Rosé, LdC Sup.,Schiava Gentile, St.Magdalena, PN, Lagrein, Me+Cab, Moscaro Rosa Rosé

 ■kunst.stück クンシュトゥ・シュトゥック(3)

Pinot Bianco, Lago di Caldaro Superiore, Cabernet Sauvignon Riserva,


●生産ラインの割合:

Lago di Caldaro 25,8%
Pinot Bianco 11,5%
Gewürztraminer 9,5%
Lagrein 9,1%
Chardonnay 8,2%
Sauvignon 6,9%
Pinot Grigion 5,5%
Cabernet 5,4%
Pinot Nero 5,3%
Müller Thurgau 3,7%
Merlot 3,5%
Moscato Giallo 3,1%
St.Magdalena 1,1%
Kerner 0,7%
その他 1,0%

●観光:カンティナツアー(要予約) 

●ワイン販売: [ワインセンター] 9-19 月-土、及びオンライン対応もあり

●お勧めレストラン:  ランドガストホフ・ゼーペルレ [Landgasthof Seeperle]

●インポーター:  アサヒビール株式会社


歴史 

カンティナ・カルテルンの歴史は古く、1世紀以上かけて今日の基礎を築き上げてきました。会社としての持ち味は、プロ意識、情熱、チームワーク、経験、そして最高の品質が基準となっています。今日、カンティーナ・カルテルンは南チロルで最も重要なワイナリーの1つです。しかし、カルダーロはワイン愛好家のためだけの特別な場所ではなく、ワイン作りに関係する多くのコミュニティの主人公として捉えています。何年にもわたって雇用や人材を作り上げ、献身的な取り組みをしてきました。企業理念は、「品質への意欲」と「継続的な模索」を掲げ、日々ワイン作りに勤しんできました。


1900年の創業から今日まで:

ワイナリーの歴史は20世紀初頭にまでさかのぼります。戦争と南チロルのオーストリアからの分離、帝国の輝かしい時代、経済危機と回復、イタリア併合、そしてブドウ栽培における品質向上への絶え間ない努力を通じて、5つのワイナリーがその主人公となります。様々な問題を抱えた出来事を振り返る1世紀。今日21世紀には、650名の契約農家と450ヘクタールでブドウ畑を管理する協同組合になりました。 

1900:ケレライ・カルテルンの設立 

1906:バウエンケッレライ・カルテルンの設立 

1908:ユビロイムス・ケレライ・カルテルンの設立 

1925年:ノイエ・ケッレライ"Neue Kellerei"(ヌオーヴァ・カンティーナ)の設立。

➡︎1900年創業のケレライ・カルテルンはこの時「エルステ・ケッレライ(Erste Kellerei)=第一番目」と名称を変更します。 

1932:バロン・ディ・パウリのプライベートワイナリーを「ヨーセフ・バロン・ディ・パウリ」として協同組合が設立。 

1986:エルステ・ケッレライ[Erste Kellerei]とノイエ・ケッレライ[Neue Kellerei]が合併し「エルステ・エ・ノイエ[Erste + Neue]」と名称を変更。 

1991:ヨーセフ・バロン・ディ・パウリ協同組合がエルステ・エ・ノイエ[Erste + Neue]に統合されテヌータ・バロン・ディ・パウリが再び独立。 

1992:バウエンケッレライ[Bauernkellerei]とユビロイムス[Jubiläumskellerei]が合併して再び「ケレライ・カルテルンKellerei Kaltern」を設立 。

2016:ケレライ・カルテルン[Kellerei Kaltern]がエルステ・エ・ノイエ[Erste + Neue]を吸収合併し実質親会社になる。


クンシュトゥ・シュトゥック【kunst.stück=芸術のかけら】

このプロジェクトは、土壌・天候・太陽などの自然の特徴とそのヴィンテージを反映したブドウに捧げるために、2014年のヴィンテージから考案されものです。自然の芸術作品として、マグナムボトル(1,5リットル)の限定版でリリースします。カンティナでは、アーティストやグラフィックデザイナーを招き、さまざまなヴィンテージの「芸術のかけら」を特別なラベルを作成します。

最初のワイン「ピノ・ビアンコ2014」で、情熱的なアーティスト、クラウディオ・パテルノスターが並外れた創造性でラベルを仕上げました。一方、「ラーゴ・ディ・カルダロ・クラッシコ・スペリオーレ 2016」は、「カルダロ湖生活の喜び」をイメージして考案したミラノのデザイナーであり教師のステファノ・マンダートによって作られました。ブレッサノーネ出身の若手アーティスト、マルギット・ピッツシエラーは「カベルネ・ソーヴィニヨン・リゼルバ 2015」のラベルを作成しています。


クインテッセンス 5x5 

カルテルンの「クインテッセンツ=5つの要素」とは、カンティナの魂や本質であり、構成要素とも言えます。「クインテッセンツ=5種類のワイン」というだけではなく、このカンティナを語る上で重要な5項目を、またそれらを5つの要素に分けて説明しています。「歴史」「品種」「街」「州」そして「強力なコミュニティ」に分かれています。


 (1)歴史:5つのセラー 

  • La Erste Kellerei ラ・エルステ・ケッレライ(1900年) 
  • La Bauernkellerei ラ・バウエルン・ケッレライ(1906) 
  • La Jubiläumskellerei ラ・ユビロイムス・ケッレライ(1908) 
  • La Neue Kellerei  ラ・ノイエ・ケッレライ(1925) 
  • La Cantina Josef Baron Di Pauli ラ・カンティナ・ジョセフ・バロン・ディ・パウリ(1932年) 


 (2)5品種のワイン  

  • ラーゴ・ディ・カルダロ(スキアーヴァ種)
  • ピノ・ビアンコ 種
  • ソーヴィニヨン・ブラン種
  • カベルネ・ソーヴィニヨン 種
  • モスカート・ジャッロ(黄マスカット)種


 (3)カルダーロ市の5つの事実 

  • 南チロルで最も有名なワイン生産の自治体 
  • 海抜200〜700メートルのブドウ畑 
  • 750ヘクタールのブドウ畑がある州で2番目に大きいワイン生産自治体 
  • カルダーロ湖:アルプスで最も暖かく、南チロル最大の自然湖 
  • テロワール:異なる特徴の土壌に、大陸性と地中海性気候の融合  


(4)南チロルの5つの特徴  

  • ブドウ栽培における2000年以上の歴史 
  • イタリアの最北端のワイン産地 
  • イタリアでのヘクタールあたりの賞の最高密度 
  • イタリアのワイン生産地の1%未満 
  • DOCワインの98%、全国レベルでユニーク 


(5)協同組合の5つの特徴 

  • 収穫はすべて手作業 
  • カンティナでのプロ意識
  • コンピテンス(知識、スキル、能力の応用)
  • 技術革新とブドウづくりの情熱 
  • 協力原則による安全性と柔軟性

家族としての協同組合

協同組合は、650人のワイン生産者で構成されています。我々は大家族のように考えており、彼らのほとんどは1ヘクタール未満の土地を管理・運営しています。彼らは他に職業を持ちながらブドウ栽培に勤しむ情熱的なワインメーカーで、余暇の時間を使って畑作業を行っています。これがカルテルンの魅力の一部となっています。


協同組合の真の強み

家族経営の構造と小さなブドウ畑で構成された生産地域により、カンティナは必要に応じて、柔軟に臨時の労働力を動員することができます。また畑に勤める農家とワインを管理する醸造担当者は、常にコンサルティングサービスを受けられる環境を整えており、パートナーとして一年中トレーニングと改善を継続させることができます。個々の生産目標を定義したり、管理訪問を実施したり、定期的な意見交換なども積極的に行っています。  


共に働き、共に生きる

収穫がその例ですが、秋になると若者から年配まで家族全員が集まり収穫を行います。一度に集中的に行い、また作業は全て手作業で行われます。そして一日の終わりには、日中の疲れを癒すためにみんなで食卓を囲みディナーを楽しみます。カルダロ湖での生活は、家族の温かさ、協力の精神、努力の結果で構成されています。これらすべてがカルテルンのワインに現れています。


ワインの生産 

品質、持続可能性、バイオダイナミクスへの取り組み 

カルテルンとって100年以上続くブドウ生産は、喜び以上に義務を感じて日々作業を行なっています。自然や文化的景観の保全に貢献しつつ、土壌の多様性と生態系の保護を強化したいと考えています。手作業と自然のリズムに従い、高品質のワインを生産するために一部の生産ラインでは、バイオダイナミクスを取り入れています。 

剪定から収穫まで 

ブドウ畑での作業は、年間を通じて異なる作業工程を複数行なっていきます。剪定から収穫まで650人のメンバー間で行われる相乗効果を最大限に活用すること。そのために調整、及び訓練は絶え間なく行われます。2,000区画それぞれに個別の収量目標を設定し、それをカンティナの畑管理担当者が監督および評価を行います。ブドウの品質はカンティナにとって重要な要素であり、協同組合のすべてのメンバーが同じ意識を持って取り組んでいます。彼らは自分たちのブドウがどのワインに使用されているかを知っています。


ハンスヨーク・パッラ氏(カルテルンのブドウ栽培担当責任者)曰く、「ブドウ畑で働くことの素晴らしさは、コミュニティに属しているという感覚と、それぞれが仕事を遂行するための情熱を持って行なっているということです。この大家族は、気まぐれな天気や予測もつかない要因に対処することができます。それは必要に応じてお互いをサポートできる団結力であり、それが強みでもあります。これらが生産目標と品質基準を保証する方法と考えています」


「サン・ニコラ」「サン・ジュゼッペ」「ピアニッツァ」  

カンティナが管理する1,100のブドウ畑では、特殊な土壌で構成されています。カンティナでは南チロルのバイオダイナミクス農法のパイオニアとして、有機栽培ブドウを15ヘクタール以上生産しています。ルドルフ・シュタイナーの教えに従いブドウ畑、及びカンティナでも適切に対応されています。原則として除草剤の使用を避けています。


プロジェクト・トリプルエックス-『XXX』 

プロジェクト・トリプルエックスは「エクスプローラー(探検・探究)eXplore」「エクスペリメント(実験)-eXperiment」- 「エクスクルージブ(限定)eXclusiv」を意味します。 これらを目指してXXXプロジェクトでは、エノロゴ(セラーマスター)が熱心に実験を行い、2種類のラベルを作りました。一つはピノ・グリージョを使用した「マシェッド–Mashed(潰したという意味)」で果皮と共に楕円型のセラミックオークで発酵させたワイン。もう一つはカベルネ・ソーヴィニヨンを使用した「One by One」ではブドウは個別に手作業で作られていて、茎を含んだ果汁をトノー(大樽)で発酵させたものです。どちらのワインもろ過せずに瓶詰めが行われています。


【品種説明】

 PB:ピノ・ビアンコ(Pinot Bianco) 

 CH:シャルドネ(Chardonnay) 

 PG:ピノ・グリージョ (Pinot Grigio) 

 SV:ソーヴィニョン・ブラン(Sauvignon)  

MG:黄モスカート(Moscato Giallo) 

MT:ミュラー・トゥルガウ(Müller Thurgau) 

GWT:ゲビュルツトラミネール(Gewürztraminer)  

Ries.:リースリング(Riesling) 

PN:ピノ・ネーロ・ピノ・ノワール(Pinot Nero) 

CS:カベルネ・ソーヴィニョン(Cabernet Sauvignon) 

ME:メルロー(Merlot) 

LG:ラグライン(Lagrein) 

LdC:ラーゴ・ディ・カルダロ(Lago di Caldaro)

Cla.Sup.:クラッシコ・スペリオーレ(Classico Superiore) 

Ris.:リゼルヴァ(Riserva)


  【参考資料】 

Kaltern HP 

[Vini e Cantine dell'Alto Adige] Christoph Tscholl Angelika Deutsch 

[Guida Veronelli]2020 


いかがでしたか。  

このブログではでは南チロル(アルト・アディジェ)のワインを中心に、生産者の概要からワイン造りへの思いまで紹介しております。  

もしご不明な点や気になるワインメーカー、ワイン、生産地等ございましたら、どうぞお気軽にコメント欄にお書きください。  

それでは楽しいワインライフを。 


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Avvocato del Vino Altoatesino

【旧:南チロルの風ブログ】2003年よりイタリア・南チロル地方(イタリア語:アルト・アディジェ州)で働くソムリエが、ワイン生産者やイベント、地域について紹介するブログです! 【南チロルの風ブログURL: https://altoadigefiordiciliegio.blogspot.com/】

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