今回は個人的なお話しをしてみようと思います。1999年に海外で生活し始めて、イタリアに来てからは20年弱。うち3年は日本で生活していましたが、そんな私がどのようにして外国語、主に第二外国語のイタリア語を学んだのか? 順風満帆に言語が学べたのか? 才能があったから喋れるようになったのか? 決してそうではありません。幸運なこともありましたが、地道にやってきたことが多かったイメージです。ではそこにはどんなヒントが隠れているのでしょうか?深掘りしてみましょう。
学生時代
学生の頃は英語授業には興味がありました。ご存知の通り日本の英語授業は「テストで点数を取るための勉強」で「コミュニケーション」というのは高校までは、当時あまり意識していませんでした。しかしその頃から「会話をしながら仕事をして行くだろうと」イメージをしながら外国語に取り組んでいました。
この頃は「誰から学ぶか?」が非常に重要です。外国語だけではないかもしれませんが、モチベーションが上がる先生や下がる先生により勉強するハードルが変わってきます。自分は幸運なことに、中学では塾の先生、高校では学校の先生に恵まれて勉強意識は低くならずに学生生活が送れました。
【文法から会話へ】
高校卒業後、ホテルスクールに入学すると外国の先生から英語を教わる機会があり、より「発音」や「会話」を意識するようになりました。また実際のホテルで研修させてもらうこともあり、初回のパレスホテルでベルボーイを経験した際、生の外国のゲストと接したことも衝撃的でした。その時に「通じない」「伝わらない」という経験がきっかけでより会話を勉強するようになりました。
【在学中に行った具体策】
●英会話スクール:外国人の講師がいる教室で、受講生の日本人の方とは英語のみ使用。
●英語のカセットテープ:リピート機能がついたものを使って文章を音で記憶。
●英語で日記:卒業後に行くスイス研修の課題の一環として1年弱継続。
正直それでも不安でした。会話することの自信がついたきっかけはスイスに行ってからです。因みにこの頃ドイツ語もラジオ教材を使って勉強していましたが、なかなか身になるようなものではありませんでした。スイスジャーマンという独特な言語だったのと、スタッフとの会話は英語で十分だったので、当時深掘りはしませんでした。
スイスのホテルで
スイスのホテルでは日本人スタッフもいましたが、もちろん上司や他セクションにはヨーロッパのスタッフ。会話をしないと仕事ができないという環境です。この時に思ったのは「文法よりも会話が重要」ということで、スリランカ人、ポルトガル人、トルコ人、皆さん文法など気にせずに会話をしていたのに刺激を受けました。
【思ったことを伝える】
このことを自分で意識するようになったのは、ヨーロッパ内を観光をした時、滞在するホテルの方、観光案内の方から「どの言語を喋る?ドイツ語、フランス語?、英語?」と聞かれ「英語を喋ります」と答えていた時です。この頃から「会話」に自信が持てるようになりました。それはある一定の基準を超えた気がしたのです。それは「相手の言っていることを理解し、自分の言いたいことを言う」。この概念で、会話は一旦クリアーをした気がしました。
でも正直、観光客レベルをクリアーしても「信頼関係」や「生活感」のある会話という域ではありませんでした。このレベルからイタリアに向かい、第二外国語を学んでいきます。ではどのようにして学んでいったのでしょうか?
イタリアのリストランテで
ここで初めに働いたミラモンティ・ラルトロの働き方がポイントになると思います。当初日本人スタッフがいると聞いていて、英語しかできなかった自分は小舟に乗ったつもりでリストランテに訪れました。しかしその日本人の方はすでに退社されていて、日本語皆無。おまけに英語を喋るスタッフは一人のコックさんのみ。ホールスタッフはイタリア語のみと言う過酷な環境でした。
見様見真似で仕事を覚えなければいけない状況で行った言語対策は、全て「セリフ化」するということでした。 場面・場面を想定し、ある場面では「こう言う」、返事が帰ってきたら次は「こう言う」。 シチュエーションごとに言いたいこと、言われること、それに対してまた言い返すことを抽出して、全部セリフ化するということです。
具体例的にお伝えすると、中座されたゲストがいるとします。
カメリエーレ:よろしければご案内しましょうか?
ゲスト:お手洗いはどちらですか?
カメリエーレ:ご案内します。階段を降りて右側です。
このような会話を事前に想定しておき、必要な語彙を準備しておきます。これらの語彙が増えていくと、会話が生まれます。「どこからきたの?」「なんでイタリアにきたの?」
また会話の内容によっては、ある程度会話のオチもつけておくこともサービスだと思います。
「日本の田舎から来たんですけど、ここもだいぶ田舎ですね。でも田舎には美味しいものがいっぱいあって困ってます」と言うと共感してくれるイタリア人も多かった印象でした。
また質問されたゲストの言葉を覚えて「セリフ化」すると、自分がお客さんの立場になった時に質問ができます。これの繰り返しです。まるで筋トレに似た感じだと思います。
【セリフ化の次は・・・】
セリフ化ができたら、今度は語学学校で文法を習うのがお勧めです。ミラノにいる時に、会話力を上げるために学校に通いました。その時点でイタリアに来てから1年半ほど経過しており、会話力には自信がありました。しかし文法や喋り方には癖があることも認識していました。
午前中学校に通い、午後の職場では同僚やゲストに覚えた文法を使う。語学学校の活用方法は「会話力を上げて、正しい言葉に矯正していく」という感じです。そうなると同僚やゲストからの信頼感が増します。
ちなみにこの時期に日本語の料理説明も「セリフ化」していました。日本人のゲストが多く見えるレストランで、日本語が出てこない悔しい思いを何度もしたため練習してました(笑)
現在では、ここ南チロルのドイツ語も同じように必要なセリフを抽出し、耳で覚えたセリフを一旦「使える」レベルにまで活かせている気がしています。
【第二言語あるある】
第二言語を学んでいると、ある時パズルがカチッと組み合わさるような感じがあります。イタリア語がある時から理解ができ、喋れるようになります。すると不思議なことに第一外国語(英語)も間接的に理解が深まります。文章の食い立て方や伝え方など言語の関連性があるからだと思います。これも英語を上手に話すイタリア人の同僚のお陰だったと思いますが、日本に帰国した際、ある上司から「君の英語はイタリア人が喋る英語だね」って言われたときがありました。言葉は生きているので、誰から教わったかによりこのように変化して行くのだと、面白い発見でした。
日本でもできること
やはり海外に行かないと言語習得できないないのでは?とご意見がありそうですが、私は日本でもできることはたくさんあります。先ほど「筋トレに似ている」言いましたが、まさに言葉習得は筋トレです。練習しないと筋肉はつきませんし上達しません。単純に顔の周りの筋肉も英語と日本語では変わってきます。そのような直接的な筋トレも含み、部分部分を鍛えていくイメージで考えてみます。
部分部分とは「耳・口・頭」です。
●耳:言語を耳に馴染ませる
➡︎具体的にはテレビ・ラジオ・ポットキャストなど活用し、かけっぱなしにして耳にならします。イタリアにいた時に、よく耳にする単語や言い回しをメモしておいて、後で調べると言うことも役に立ちました。周りの方の喋っている会話にも耳を傾けていました。
●口:言語の喋り方を体得する
➡︎語学学校・セリフ化・歌などで外国語を喋る顔や口周りの筋肉を動かす。方言や早口言葉など現地で喋られている言葉も真似すると愛嬌があると言われました。
●頭:シチュエーションや言いたいこと抽出し翻訳する
➡︎そもそも「何のために語学を学ぶのか?」を認識します。また目的をはっきりするだけでなく「伝えたい」という思いも大切にします。
【言葉を学ぶ前提として】
しばらくこの経験をすると一瞬モチベーションが下がります。それは言葉を学ぶ目的がはっきりしないと、日々の努力に無意味さを感じるからです。その時に【なぜ言葉を学ぶのか?】を明確にしてみましょう。外国の言葉を使って何をしたいのか?旅行?ビジネス?留学?結婚? それらにフォーカスするのです。またその際大事なのは【どういう役割で言語を喋るのか?】イメージすることです。
単純に喋るだけなら、50か国後喋ることも可能です。 以前、自称ウエイターという同業者のゲストがお見えになった時、「俺は50か国後を喋る」と行ってました。よく聞くと、50カ国語の挨拶ができるというだけで「喋ることができる」という概念を持っている人もいます。
日本人の感覚では、スペインでサッカー選手として活躍されている久保建英選手のように、インタビューを現地の言葉で答えるレベルが、「喋ることができる」と捉えますが、何を喋るかが重要です。もし久保選手がサッカー以外で興味のない事を喋れと言われれば、おそらく喋れないと思います。 久保選手はサッカー選手という役割で、サッカーに関してスペイン語で流暢に喋るということが彼の最大の魅力なのです。
前に話した自称ウエイターも、ウエイターという立場で50カ国語の挨拶ができることが、「喋る」という意味で最大の魅力なのだと思います。
つまりここでは何が言いたいかと言うと【言葉は道具である】と言うことです。それ以上でも以下でもないので、私がスイスで英語学んでいた時の不足感「信頼関係を築く言葉」や「生活感のある言葉」というのは、語彙の問題で、言葉を学ぶための目的ではありません。そこは間違えないようにしたほうがいいと思います。
因みに私にとって外国語とは『レストランで仕事として使うための会話術』として捉えています。
まとめ
ここで改めて外国語を学ぶための方法を整理してみましょう。今までお伝えした方法は以下の5つのステップを順不同で行ってきましたが、以下の順番で行うと効率よく学べると思います。
外国語を学ぶための5つのステップ
1:目的を決めましょう
(➡︎旅行?ビジネス?留学?結婚??)
2:シチュエーションごとに言うべきことや言いたいことを抽出してみましょう
(➡︎どういう役割で言語を使うのかを考える)
3:翻訳してセリフ化してみましょう
(➡︎専門用語に注意)
4:外国語を耳に馴染ませましょう
(➡︎訳した内容を自分の声で録音してみる)
5:ネイティヴと触れる機会を作りましょう
(➡︎正しい言葉に矯正してみる)
筋トレという観点からお伝えすると、1が決まったら、2➡︎3➡︎4➡︎5を回して行くと語彙や発音、そしてコミュニケーションが深まって行くと思います。重要なのは学んだことをアウトプットできる環境(この場合、ネイティヴと喋る)があるのがより良いと思います。
【学びの大きな違い】
自分が英語を勉強した時は「文法」から「会話」へと学んでいきました。この場合、学生の頃だったので『形としてこういうものがある』というくらいのレベルで理解するくらいで良いと思います。
イタリア語、ドイツ語を勉強した時は「会話」から「文法」でした。どちらが正解というのはないと思いますが、後者で学んだ時に感じたのは語彙の幅が非常に広がるということです。
ちなみにドイツ語の文法はまだまだ怪しいレベルです(笑)なのでドイツ語のことは聞かないでください・・・・
いかがでしたか。
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