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【Gschleier Tasting】グシュライアー・比較試飲:後編
Gschleierグシュライアー比較試飲の続き。
◆ 比較試飲
2016
コフラー氏曰く、非常に興味あるヴィンテージ。
長期熟成に耐えうる可能性がある品質になったという。
程よい暑さと冷涼な晩秋により遅積み収穫が可能となった。
初収穫は10月10日。白、赤ともに優良な年号。
赤ワインに関しては長期熟成可能。 ルバーブ、アーモンド、ラズベリー 口当たりは滑らか、
全体を覆う酸、 舌の中央から八方に伸びるタンニン、コンパクトな骨格が印象的だが、
肉厚な感じも感じる。
2015
生産し始めて40年目の節目の年。 デザインも当時と同じバージョンでリリースする。
ボトルも緑瓶で比較的軽めに仕様。 キャップシールとラベルも同様のデザイン。
非常に暑い気候。 果実味、特に完熟した印象が強く、ミネラルも生き生き。
3年経った現在が非常に飲み頃。 タバコ、ブルーベリー、燻製
口に入れてすぐ(味の前半)にボリュームを感じる。
酸は全体を覆い、ミネラルは舌の中央から後味にかけて広がる。
タンニンはほのかに後味にかけて広がる印象。
今回は試飲しなかったが、2014 新しいカンティナが改築してリリースした年。
生産量は非常に低い。
2013
程よい暑さ。2016年のビンテージに似ている。
5年経った現在、ちょうど飲み頃。果実感と凝縮感のバランス。
果実は大きめで、色の抽出度は低い(色薄め) 熟成香が特徴的。
タンニンも控え気味。 スパイス、プラム、チェリー 幅広い果実味のある口当たり。
タンニンの存在は細長い印象。
より舌の両端に感じる酸と舌の中央に残るミネラルが強調されている。
8000〜9000リットル生産量。(例年に比べて低い生産量)
乾燥が続いても基本的に散水は行わない方針。
その場合はヴァンダンジュ・ヴェール(青果房収穫)を行い、
生産量を削減するとともに、 残りの菓房に十分な水分を行き渡らせる。
2012
冷涼なヴィンテージ。マロラティック発酵が非常に遅め。 非常に興味深い年号。
ピエモンテのワインを連想させるような香り。
香りはスパイス、赤果実、ルバーブ、ヴァイオレットなど複雑性を伴う。
口当たりのボリューム感が特徴。 舌の中央からミネラル感が全体を引っ張る。
後味にタンニンが舌の両端と中央に滑らかに残る。
◆ 比較試飲のエピソード
コフラー氏は以前カンティナで行われた比較試飲の模様を話してくれた。
1971年から1976年までの5種類をセレクトした。
参加者はワイン醸造家、ワインライター、ソムリエ等のワインのスペシャリスト。
グシュライヤーの1976年をそのうちの一本に交えて、ラベルをふてせ、比較試飲を行なった。
ちなみに他のには、
●Chianti Classico 1971 Castell'in Villa
カステッリン・ヴィッラ キャンティ(トスカーナ)
●Chateau Figeac 1975
シャトー・フィジャック(ボルドー)
●Chambertin 1975
シャンベルタン[生産者不明](ブルゴーニュ)
●Barolo Chiara Boschis 1976
バローロ・キアーラ・ボスキス(ピエモンテ)
結果から言うと、 上記ワインに引けを取らない繊細さとポテンシャルであったとのこと。
どちらのワインも角が取れて”滑らかさ”が特徴となっていたであろうが、
その中でスキアーヴァの古樹が同じ土俵で評価を受けたのは驚きだ。
繰り返すが、全てラベルを隠した状態で行われ、 プロのテイスター達の意見である。
2010
早い時期に飲むとフレッシュさを十分に楽しめるギリギリのヴィンテージ。
ピノ・ノワールのような印象。 春の涼しさ、夏の暑さ、収穫期は涼しい気候。
酸やタンニンが生き生きしている。 この年からカンティナ内の働き方を変える(地下を利用)
キノコ、スーボア(森の香り)、マジパン、ピノ・ノワールのような印象。
口当たりは、味の前半と後半で印象が変わる。前半は果実味。後半は幅広いタンニン。
後味に広がるミネラル感が全体を繋ぐ。
2009
非常に暑い気候。長期熟成には向かないヴィンテージ。
モスト、熟れた果実、リコリス、枯葉のような香り。
細めのストラクチャーに、前半から感じるミネラルが舌の中央に存在感を示す。
口に入れて3秒後くらいに中央に寄ったタンニンが特徴。
2007
果実味が非常に凝縮したヴィンテージ。10年来の暑さ。
ポテンシャル、タンニンの滑らかさ、熟成香が詰まったビンテージ。
リコリス、乾燥プラム、スーボア、デーツ
ワイドな口当たり。奥行きのある果実味が心地よいが、ミネラルが中央から広がり
酸が全体を覆う印象。タンニンは後味に中央に残る。
◆ラベルの構成
1975年に芸術家のフローラ氏がデザインを行う。
グシュライヤーを作るきっかけになった三人の技術者。
シュピターレール氏(お父様と二人の息子) 。
お父様は古樹のみでワインを作ったご本人で お二人の息子さんは量産思考から品質思考へ転換した。 一人はギルランのエノロゴに、もう一人はサン・パオロ社のエノロゴとして活躍。
2005
コフラー氏が就任して初めてのビンテージ。非常に冷涼で収穫が遅れた年。
熟成に時間がかかり、高い凝縮感は感じられず。2013年のビンテージに似ている。
キノコ、スーボア(森の香り)、ラズベリージャム
細めのストラクチャー。前半からはっきりと強めのミネラルに舌の中央に後半に感じられるタンニン。
前年までのマーケティング戦略を一新し、改革に努めた一年でもあった。
ボトルの形も肩のあるボルドー型から、なで肩のブルゴーニュ型へ(2007年のビンテージより)。
理由は産している品種が、シャルドネをはじめ、ピノ・ノワール、スキアーヴァと
ブルゴーニュのような口当たりの滑らかな品種が多いため。
ちなみにメルローやラグレインも使用しているが、カンティナの方針として
全て統一したボトルへ瓶詰めされることとなる。
1999
コフラー氏の前任のエノロゴ ・ヴァイステッヒェン氏Weisstechenのワイン。
冷涼なヴィンテージ。タンニン、酸が比較的高め。マロラティック発酵はせず。
20年経った今でもフレッシュ感が満載。
チェリーブランデー、スーボア(森の香り)、リコリス
ピノ・ノワールのような骨格。しかし果実味の前からミネラル感が存在感を示す。
酸は舌の両端から中央に寄る印象。タンニンは厚みを残す。
1988
非常に暑い年。収穫量は多くない。コフラー氏が醸造学校を卒業した年。
リコリス、スーボア(森の香り)、キノコ、果実香もしっかりの感じる。
口に入れて前半からボリューム感、ミネラル、タンニンが存在感を示す。
ここにきてバランスの良さが引き立つ。全て舌の中心に感じられる。
1985
非常に優良なビンテージ。気候もブドウの状態も秀逸した年。
乾燥トマト、リコリス、枯葉、ピエモンテのワインのような印象。
比較的細めのストラクチャー。味の後半にミネラル、酸、タンニンがふんだんに感じられる。
エレガントな印象。
1983
ポテンシャルのあるビンテージ。
毎年300〜400本づつストック用で保存している。
キノコ、枯葉、リコリス、乾燥イチジク、デーツ
味の前半にワイドな骨格が感じられる。口に入れてすぐ酸が存在感を示し、
舌の中央から後味にかけてタンニンとミネラルが広がる。
30年経過しているとは思えないほど、エレガントな仕上がり。
会場にはあのドナ・ハートマンも参加していた。(私の前の席)
彼もスキアーヴァの古樹を使ってドナ・ルージュを作っている。
ハートマンも言うが、南チロルの最大の武器は
このスキアーヴァの古樹。
ここには世界で戦えるポテンシャルが潜んでいると、
コフラー氏と共に意見交換をする。
ただ現状、スキアーヴァ種には『リセルヴァ』表記することはできず、
また市場のイメージも、
「スキアーヴァ=軽いワイン」と言う印象も強い。
年代によっては、頭の痛くなるテーブルワインとネガティブな印象も拭えない。
ここでこのようなイベントに参加し、
「スキアーヴァの次世代における印象をしっかりと理解してほしい」
と言う思いが、この二人から感じられた一瞬だった。
改革も必要だが、まずは市場が捉える味の印象を変えるという思いに
頭がさがる思いだ。
皆さんもぜひスキアーヴァ種の魅力に触れてみてはどうか?
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