【イベント】グシュライアー・比較試飲:前編

【Gschleier Tasting】グシュライアー・比較試飲:前編 

第52回、AISのコングレスの試飲会レポートの続き。


 

 テーマ:Girlanギルラン社のスキアーヴァ古樹「Gschleierグシュライアー」の比較試飲 

日付:2018年11月4日 

場所:メラーノ・クルサール 

講師:Gerhard Koflerゲルハード・コフラー(ギルラン社のエノロゴ) 

試飲ワイン:12ヴィンテージ  



【Gschleier Vernatsch Alte Rebe  グシュライアー・フェルナッチ・アルテ・レーベ】  

●2016    

●2015   

●2014   

●2013   

●2012   

●2010   

●2009   

●2007   

●2005   

●1999   

●1988   

●1985   

●1983 


 皆さんは「土着品種」という言葉を聞いて何を思い浮かぶだろうか? 

オリジナル品種、貴重、限定等の ポジティブな印象がつい良いのではないだろうか? 


 

そもそも「土着品種」とは、 その土地で発症した独自の品種で、 

環境や遺伝子により固有の性質が異なってくる品種である。 


一方、シャルドネやカベルネ等、 一部フランス発祥の品種で知名度の高いブドウは、 

その個性の強さから世界各地で栽培することができるため 「国際品種」と呼ばれる。  


ここ南チロルでもシャルドネ、 カベルネ等国際品種が栽培される一方、 

スキアーヴァ、ラグライン は赤ワイン用「土着品種」として栽培されている。  


ちなみに、ドイツやフランス・アルザス地方でも栽培されている

 Gewürztraminerゲビュルツトラミネールはここ南チロルが発祥と言われている。  


南チロルのワイン街道に 「Traminトラミン」というコミューンがある。

スパイシーな白ぶどうで、 この場所発祥ということから

「スパイシーな=Gewürziger」と 「トラミンの=Traminer」が組み合わさり同名となる。

 Gewürztraminerゲビュルツトラミネールに関しては、 また別の機会に詳しく触れてみたいと思う。


 話を「土着品種」に戻そう。  


「土着品種」をポジティブな印象で捉えている一方で、

 ネガティブに捉えているものがある。  

それはここ南チロルにおけるスキアーヴァ種である。

 戦前から戦後を経て量産された品種で、 州全体で22.35%の栽培面積を占める。  

コンシューマーの印象は「軽めのワイン」 


 ◆スキアーヴァ種について(2018年11月24日の同ブログより) 

 ・Vitis Vinifera(ヨーロッパブドウ) 1500年代、中世紀後半にはこの品種は、

 南チロルにおいて土着品種として認識されていた。  

軽めのブドウ品種として、アルコール度数、タンニンは低く抑えられ、 

他の地域にはない独自性を活かしてきた。 

ボルツァーノのサンタ・マグダレーナは 充実した果実味をふんだんに感じる。 

一方ラーゴ・ディ・カルダロやメーラーナーでは より

マイルドな口当たりとスパイス香が前面に出る。

 果粒が大きいものが 「Schiava Grossoスキアーヴァ・グロッソ」 

 一方小さいものは  「Schiava Gentileスキアーヴァ・ジェンティーレ」 

果粒が灰色のもの  「Schiava Grigiaスキアーヴァ・グリージャ」 

と3種に分かれる。 


栽培面積:1,157ha(南チロルのブドウ栽培全体で22,35%の植栽率) 

栽培エリア:南チロル全域 

栽培方法:ペルゴラ仕立てが大半(スパッリエーラも一部採用されている) 

最適条件の土壌:沖積土壌、砕屑岩質土壌 

シノニム: Trollingerトロリンガー  Vernatschフェルナッチ  

                  Tschaggeleチャッゲレ  Kleinvernatschクラインフェルナッチ 



◆ Vigna Gschleier グシュライアーについて 

 ●初ビンテージ:1975年 

 ●畑の位置:コルナイアーノの町の北側、南向きの斜面 

 ●畑の広さ:8000m2 

 ●畑の標高:430m 

 ●土壌の質:氷堆積石灰質に粘土混じり土壌 

 ●樹齢:80−110年(最も古い樹は1905年に植栽) 

●栽培スタイル:ペルゴラ 

●収穫:手作業にて収穫。 アルト・アディジェでは稀に行われる、2・3度に分けての収穫。 

完熟したブドウの房だけを選定。 1週間後にはよりエキス分をはじめとした全体の凝縮度が増す。 それだけ鳥害や気候変動等のリスクもあるが、 彼らの求める「品質」はここにある。  

●発酵:ステンレスタンクに運ばれてアルコール発酵を遂げる。 

マセレーションは25日から30日ほど長期間行う。 (年号によって差あり) その後、木樽に移されてマロラティック発酵に続き約10ヶ月間熟成。 木樽の容量は5000〜7000リットル。 

●歴史:Gschleier グシュライアー畑は1905年よりブドウを栽培。 転換期は1975年。

 当時エノロゴだったHartmuth Spitaler ハートムット・シュピターレール氏のお父様が、 スキアーヴァの古樹のみで醸造した。 発酵後は清澄、及びその他の無駄な作業は一切行わず瓶詰め。 

25ヘクトリットルで3000本になった。 

当時の取引価格より4・5倍の値段がつくほど、 その貴重な価値を認められるほどだった。 

ちなみに古樹以外のスキアーヴァは 「Fass Nr.9ファス・ヌンマー・ノイン」にボトリングされる。 




 ◆ カンティナ・ギルランについて 

 創業は1923年、25のブドウ栽培農家によって創設。 

当時の協同組合は1910年から1915年にかけて集中して創業ラッシュを迎えた。 

1923年とは第一次世界大戦が終わり、5年後のことだった。

 第一次世界大戦までは、 小さなブドウ生産者は独自で醸造及びボトリングをして、 

オーストリア、スイス、ドイツ・バイエルンへ販売していた。  


しかしイタリアに併合されたこの時期には、 国を跨ぐことが難しくなり、 

小さな生産者は生計を立てられなくなってくる。 

このような背景から、協同組合がこの時期に集中して創業したのである。

 現在カンティナ・ギルランは、 200のブドウ栽培農家によって形成されており、

215haの畑を管理している。 

 生産比率は赤ワインは全体の75%、白ワインは25% 


 Cantina GirlanのHPより 赤ワインの代表栽培品種はスキアーヴァ、ピノ・ネロ、ラグライン 、

少量のカベルネ。 白ワイン用の品種は、ピノ・ビアンコ、ソーヴィニョン、シャルドネ。


Cantina GirlanのHPより

 

次回はいよいよ比較試飲のレポートに関してフォーカスしてみよう。 憧れのあの方も登場!! 


Avvocato del Vino Altoatesino

【旧:南チロルの風ブログ】2003年よりイタリア・南チロル地方(イタリア語:アルト・アディジェ州)で働くソムリエが、ワイン生産者やイベント、地域について紹介するブログです! 【南チロルの風ブログURL: https://altoadigefiordiciliegio.blogspot.com/】

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